木造の3階建ては住宅を建てる前に役所への構造計算書の提出が義務付けされています。柱や梁の1本ごとの計算からはじまり、耐力壁の耐震・耐風強度、床剛性、偏心、基礎などの計算を行って、計算書はA4用紙に印刷して200頁を超える膨大なものになることもあります。なので、2階建てとは違い計算書作成の費用もかかります。
実際にどのくらい2階建ての住宅と違うかというと、同じ坪数の場合、3階建てには構造用の壁が1.5倍の量必要になります。つまり、より多くの木が使われているんですね。
○三階建てを建てるときの注意点
①近隣説明の義務
…中高層建築物の扱いになった場合は、実日影図面をもとに近隣住民への説明義務が生じる場合があります。
例えば、東京都の場合、中高層建築物とは
・高さが10mを超える建築物
・第一種及び第二種低層住居専用地域に建築される場合は、地上3階建て以上または軒の高さが7mを超える建築物。
となります。
②地域による制限
・防火地域…木造3階建は建てられません。準耐火建築物にして2階+屋根裏部屋(天井高さ1.4m以下)もしくは2階+地下室の建築は可能です。以前は屋根裏部屋へはハシゴで登るしかありませんでしたが、現在では地域によって固定式の階段にしても許可が下りますので建築会社さんや役所にご相談してみてください。
・準防火地域…準防火建築物にすれば木造3階建ても可能です。
③インテリアへの制限(防火地域・準防火地域)
…原則としては「真壁和室(柱の見える和室)」や「梁現わし」などはできません。
※真壁和室に関しては必要とされる太さに35㎜の燃えしろ部分を加えた太さがあれば可能ですが、柱の太さが5寸強必要となりますのであまり現実的ではありません。梁現わしに関しては、構造と関わらないような「見せ梁」であれば可能です。
(真壁和室の例)
(見せ梁の例)
<三階建ての新たな試み>
以前は、道路斜線という規制で2階に比べて3階の部屋を小さくせざるを得なかったのですが、近年では「天空率」の採用によって2階と同等の広さを確保できる場合もあります。天空率の計算に関しては専門知識が必要ですので建築会社さんによく相談してみましょう。
実は日本の場合、昔から木造で高層の建物というのは多くあるんですね。例えば、世界最古の木造建物は5階建て…そう、東京タワーの構造モデルにもなった法隆寺の五重塔です!また、老舗の温泉旅館では「千と千尋の神隠し」にでてくるような3階建て以上の建物が見られます。意外と皆さんの身近にあるかもしれませんね。