【コラム】 日本の木の文化
公開日: : 最終更新日:2020/06/09 コラム
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日本人の暮らしに深く根付いている木。私たちの先祖は、ずっと昔から木の性質を理解して加工し、生活の一部として活用してきました。
ここまで木と人々の暮らしが密接に関わっている国も稀で、日本特有の文化と言えるでしょう。
昔の日本において木は、人々が生まれた時から身近にあり、住居、道具、時には年貢の代わりとしても利用される程、当たり前に存在するモノとして扱われてきました。
しかしながら、現代の日本では科学技術が発達し、コンクリートやプラスチック、加工しやすい金属などの台頭により木に興味関心を抱く人が減ってしまいました。国が豊かになるに従い、人々が欲するモノは自動車、マンションなどの「高級」と呼ばれる無機質なものに移り変わり、木で作られたモノに憧れを抱く人が少なくなってしまったからかもしれません。
今回は改めて木製品の素晴らしさと、日本がどのように木と共に歩んできたかをクローズアップしてみようと思います。
日本と世界の住宅文化とは?
木が多く使われているモノは?と聞かれると住宅をイメージする方が多いかもしれません。
ところが、住宅に多く使われる素材は?と聞かれると、コンクリートや鉄筋など、イメージするものにバラつきがでるのではないでしょうか?
しかし、ひと昔前をイメージしてみると日本の住宅は木造建築を思い起こす人が多いはずです。
同年代の世界の住宅事情を調べてみると、その土地の風土や気候が居住文化に反映されていました。西欧諸国や中国であればレンガ造り、アフリカは土で作られたものが多いことがわかります。東南アジアや南米は木を使用した居住空間が多く見られましたが、木を並べて組み合わせ、屋根に藁や葉を敷き詰めたようなモノばかりでした。
木を削り、緻密に計算された木組で住宅を作っていたのは日本だけだったのです。
世界最古の木造建築物は日本のあのお寺…
日本が誇る世界遺産に法隆寺があります。
法隆寺は世界最古の木造建築と言われており、607年に建立されました。実に1400年も前から建ち続けているのです。1400年の間には大規模な改修工事が何度か行われておりますが、それでも1400年の間、原型を保ち続けている事実は奇跡と言っても過言ではないでしょう。その奇跡は私たちの祖先が試行錯誤を繰り返しながら磨き上げた技法の数々と、叡智の結晶でもあります。
寺社仏閣の建築を担当した人たちを宮大工と言い、建築技術を競い合ったと言います。
宮大工たちは数本の木材を繋ぎ合わせて1本の木材にする「継手」(つぎて)や、直角に交差する「仕口」(しぐち)などの技法も独自に編み出していきました。
宮大工と組み木
宮大工が編み出した木材同士を繋ぎ合わせる技法は組み木と言われ、現在世界でも注目を集めています。この組み木の大きな特徴は釘やボルトなどの金属に頼らずに組み立てられることです。
現在はビスやボルトで固定する在来工法が一般的になっておりますが、この在来工法は金物が錆びて木が傷みやすかったり、経年変化により金物に緩みが生じ、強度が落ちてしまったりといったデメリットがあります。
組み木は複雑で、作るのに時間がかかってしまいますが、その分揺れや衝撃に強く強度が持続するという凄さがあるのです。また、傷んでダメになってしまった部分を切り落とし、新しい木に組み替えることができるため、日本の木造建築は長い間朽ちることなく建物を維持することができるのです。
日本に残る伝統的な寺社仏閣の多くは、この組み木によって作られ、今なお堂々とそびえ建っているのですね。
ちなみに、東京スカイツリーは法隆寺の五重の塔の設計を元に建設されています。五重の塔の耐震構造は多くの高層建築物に応用されているのです。
下駄は仕事の道具だった?!
夏になると花火大会や祭りなどで浴衣姿の人を目にすると思います。浴衣に合わせて履くものといえば「下駄」ですよね。カランコロンと心地よく響く音は古き良き日本の情緒を思い出させてくれます。
そんな下駄も、皆さんご存知の通り木でできているわけですが、もともとは仕事のための履物だったことはあまり知られていません。
下駄の形をイメージすると、多くの人は写真のような形をイメージするでしょう。
しかし、昔はたくさんの種類の下駄があったのです。
田んぼで作業する「田下駄」。こちらは泥に沈まないように地面に設置する面積が大きく作られています。
浅瀬の海岸でヒラメやカレイを捕まえるための「ネヅラ下駄」。こちらは、陸上のスパイクのように下駄の底にたくさんの針が付いていて、踏んで魚を捕まえていました。
水中で作業をするための「足桶」。こちらは浅い水辺で野菜を洗ったり、海苔の養殖の際に使われたりしていました。小さな桶の底に足の指を引っ掛けるような作りになっており、今でいう長靴のような形をしています。
その他にも作業するために作られた下駄はたくさんあるのです。
時代は進み、江戸時代になってくると、民衆の間でおしゃれをする意識が高まり、その頃から今の下駄スタイルに移行してきました。厚底の下駄やスリッポンのような下駄など、現代の靴に共通する形の下駄が多く登場し、時代は変わっても繰り返すことはあるのだなと改めて思わせてくれます。
木彫りといって思い浮かべるのは?
日本で生活していて、木彫りの熊を見たことがない人はほとんどいないと思います。
あ!田舎のお爺ちゃんの家で見たことがある!なんて人も多いかもしれませんね。木彫りの熊、実はスイス発祥なんです。木彫りの熊で埋め尽くされた町がスイスにあり、そこを訪れた日本人が帰国した際に作ってみよう。と作り始めたのがきっかけとされています。
話が少しそれてしまいましたが、このような木彫りも日本特有の文化と言えるでしょう。
もともとは、仏教が日本に伝来してきた際に仏像を掘り始めたことがきっかけだったようなのですが、それ以降、寺社仏閣の装飾を木彫りするなど、木彫りの技術も発展してきました。江戸時代からは、店の看板や店に置く置物としてよりメジャーな存在になり、認知する人は増えたようです。
世界中にも木彫りの文化はあるのですが、日本のようにここまで精密に、且つ像や置物だけではなく、建築様式にまで派生する木堀技術はなかなかないようです。
他にもまだまだある木の文化!
日本に根付く木の文化はたくさんあります。
西欧の木でできたアンティーク家具は有名ですが、日本にも長野県の松本民芸家具、岩手県の岩谷堂箪笥などは伝統的工芸品に指定されています。
障子や装飾に使われる「組子」も昔の貴族階級の人々が装飾性を求め出し、発展してきました。
栃木県の鹿沼組子などが伝統工芸品として扱われています。
漆器や樽、桶なども、日本独自の発展を続け文化として根付いてきました。
改めて日本の木の文化を振り返ってみると、本当に素晴らしいものがたくさんあり、この技術や伝統をもっと多くの人に知ってもらいたいと思っています。
著作権の関係で載せられなかった写真や情報もございますが、ぜひ気になるものがあれば調べて頂きたいと思います。
今回まで、木と日本はどのような歴史を辿り、どのような文化に発展してきたのかを深掘りしてみました。
次回は「木が人にもたらす効果」ついて触れていきたいと思います。
「木って何となく良いよね」と感じている人は多いのではと思いますが、実は感覚だけでなく、木には様々な効果効用が実験データで示されており、これからの時代により必要なものとなっていくと思います。ぜひ次回もお読み頂ければと思います。
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