木造人工衛星、打上へ!
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最終更新日:2024/08/08
社会
住友林業と京都大学が共同で開発を進めてきた世界初の木造人工衛星「LignoSat(リグノサット)」の1号機が完成し、10月にも宇宙空間での利用が開始される予定です。
このプロジェクトは、宇宙での木材利用の可能性を探るために、2020年4月から「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」として進められてきました。両者は「宇宙における樹木育成・木材利用に関する基礎的研究」に関する研究契約を締結し、共同で取り組んできました。
「LignoSat」の特徴は、そのコンパクトさにあります。木材は高周波の電磁波や地磁気を透過する性質を持ち、これにより従来外部に取り付けていたアンテナや姿勢制御装置を衛星内部に設置することが可能となりました。その結果、衛星本体のサイズ縮小に成功し、1辺が100㎜の「キューブサット 」と呼ばれる超小型衛星の形状を実現しました。
さらに、木造人工衛星は環境負荷の軽減効果が期待されます。運用終了後の人工衛星は通常、大気圏に突入して燃焼処分されますが、アルミニウム製の衛星は燃焼時に酸化アルミニウムを放出し、大気汚染の原因となります。一方、木造衛星は大気圏で燃え尽き、燃焼時に水蒸気などを発生させ るため、地球大気への負担が少ないのです。
また、製造過程でも脱炭素に貢献します。アルミ製の人工衛星は製造に特別な工作機械を必要とし、その過程で多くの二酸化炭素を排出します。しかし、木造人工衛星の構造体は木箱の立方体であり、日本古来の「留形隠し蟻組接ぎ(とめがたかくしありくみつぎ)」技法を用いてネジや接着剤 を使わずに強固に組み上げられます。このため、製造過程での二酸化炭素排出量を大幅に削減できます。構造体には北海道紋別市の住友林業社有林から切り出したホオノキ材が使用されています。
さらに、2022年3月から12月までの10か月間、国際宇宙ステーション(ISS)で木材試験体を宇宙空間に曝露する実証実験が行われました。この実験では、宇宙の過酷な環境下での耐久性が確認され、地上での別試験では加工性や寸法安定性の高さがチェックされました。これらの試験を経て、NASAやJAXA の安全審査をクリアし、宇宙での木材活用が公式に認められました。
今後、9月にフロリダ州ケネディ宇宙センターからスペースX社のロケットに搭載して打ち上げが行われ、10月にはISSから宇宙に放出される予定です。木材のひずみや内部温度分布、ソフトエラーなどを測定します。
京都大学は今回の1号機のデータを活用して2号機の開発を進め、住友林業は得られた知見を分析し、木材の劣化抑制技術や高耐久木質外装材などの高機能木質建材の開発を推進していく考えだそうです。
木材の未来を探るひとつのプロジェクト、楽しみですね!
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